当店の万年筆はすべてハンドメイド製作です。
ペン芯やクリップに至るまで、1本1本、いわゆる手作りで製作しております。
手作り・ハンドメイドについては、創業以来ずいぶんいろいろ考えて来ました。
当店の製作スタンスについては本当にいろいろ考えましたが、ハンドメイドで作るからこそ、精度が体感できるようなものを作らなくてはならないと考えるに至りました。

万年筆の製作は、未だどうしても人の手に依らねばならない作業があり、書き味の調整はその代表です。
一方で、現代では機械で自動化できるところも多くあります。機械生産できるなら、機械で生産するほうが良いのかもしれません。
そんなことに思いをいたしたとき、私の知る限り、現代において機械化が容易に出来るが、ハンドメイドであることに特別な意義があったり、自分が使うとしたらハンドメイドの方を選択したいと思う商品がいくつか思い浮かびました。
専門外なので、適切に理解できていないかもしれませんが、思い浮かんだものは以下の4つです。
手彫り印鑑
ほとんどの方が、機械で作るよりもハンドメイドのほうが良いと思える商品の代表格だと思います。
印鑑の世界は、機械だと彫った文字の断面がまっすぐで垂直ですが、手彫りだと台形状にでき、彫ったところが丈夫になるそうです。
おにぎりやお寿司
型で作ったおにぎりやお寿司と、手で握ったもの、どちらも味は変わらないのかもしれませんが、特にお寿司などは、握り方で特徴が出せるようです。
のこぎりのスキ
最近ではあまり使用されなくなった、大工道具の「のこぎり」(替刃タイプではないもの)表面は、「スキ」が施され、微妙に厚みが変えられています。
のこぎりの世界では、ずいぶん前、それこそ大手会社では戦前から平面研削盤で砥石を使ってきれいに削ることができますが、平面研削盤がなかったころや、ハンドメイドの妙を追求した工場では、センという道具で、少しずつ削って厚みに変化をもたらしていたようです。
実際そのようにして作られたのこぎりを持っていますが、センで削られた表面の凹凸が見た目に素晴らしいのです。
単に厚みを変えるという点では見た目は関係ないかもしれませんが、厚みが適切に削られ、センの目も揃っているなら、その方が良いと思ってしまいます。
ただし、コストと技術の習得が問題となり、継続は難しいのかもしれませんし、これだけ替刃のこぎりが普及すると、従来形ののこぎり自体も珍しくなってしまいました。
セル画で製作したアニメやフィルム撮影されたTVドラマ
今では、アニメもセル画で制作されることはなく、TVドラマの撮影も現像するフィルムなどが使われることはないようです。
しかし、以前のセル画で製作されたアニメやフィルム撮影されたTVドラマは、画面に映る状態がまったく違い、誰でも見てすぐにわかります。
これを味と言ってしまうとそれっきりになってしまいますし、現代ではとても以前のような制作方法を実現することは出来ないと思いますが、以前のものに良さを感じてしまうこともあります。

上記一例は、従来形の手法ですと、コストも掛かります。現代においてハンドメイドで製作するのは技術習得もさることながら、コスト面でも決して有利とはいえませんし、これが継続の一番の問題となります。
上記、ふと思った4例を考えてみて、私がのこぎりのスキや手彫り印鑑で感じるようなハンドメイドの良さが、万年筆の出来でもお伝え出来、お客様にご体感頂くことができ、商品に良さを感じて頂けるなら、それが一番良いのでは無いかと思うようになりました。

決して安くはありませんし、商品もオリジナリティーに富んだものとなっております。
そんな中、多くのお客様に商品をご評価頂いていることには、本当に感謝しております。