現在当店では写譜ペンの販売を行っておりませんが、写譜ペンの使い方に関する参考情報として掲載させて頂きます。

音符を書く専用のペン先

パイロットのペン先の中に、MSというペン先があります。
このMSペン先についてご説明いたします。
本ページは、写譜ペンをお探しの大変多くの方にご覧いただき、感謝しております。

特殊な形状

かなり特殊なペン先で、MSは、写譜用の特殊なペン先です。用途もさることながら、形状も変わっていて、切り割りが二本あり、ペン先先端のイリドスミン合金を3つに分けています。
切り割りの終端には他のペン先とは違って丸い穴は開けていません。
戦前から伝統的にこのような形状のペン先になっています。
横に幅広い字幅ですので、幅広い字幅でもひねり許容性に対し柔軟性を持たせるために3つ割となっているのです。
SUと同様のペン先として文字筆記用に使用することも可能です。

用途

主な用途は写譜です。写譜、すなわち五線紙に音符を書くペン先です。
五線紙にシャープペンシルなどではなく、写譜ペンで書くメリットは、独特の持ち方をして筆記することにより、描線に強弱をつけられるところにありまする。後述のように、終止線が難なく引けたりするように、メリットは大きいです。
音符を書くためには、とても変わった紙への当て方をします。通常の紙への当て方とは違って、90°ひねります。縦線がもっとも細く書けるようにペン先を真横にして使います。

パイロットの写譜ペン

写譜ペンは、いくつかのメーカーから発売されていますが、パイロットのものが、もっとも伝統的な作りをしていて、ペン先の耐久性も抜群です。大正時代から発売されてきた、ミュージック(写譜)ペンの伝統的形状です。よく楽器店などで見かける安価なものとは相当な違いがあります。
安価な写譜ペンでは、先端にイリドスミン合金がついていないものもありますが、パイロットのものは、当然のごとくしっかりとイリドスミン合金が装着されています。
後述のように、写譜ペンの縦線は先端の角で書くことにより細い描線を描いています。先端の角が筆記作業によって摩耗しないように、写譜ペンも本格的なイリドスミン合金が装着されているべきです。
パイロットの写譜ペンは、一般の万年筆と全く同じしっかりした作りで、他の追随を許さない、伝統的な本格的写譜ペンの決定版です。
安価な写譜ペンをご検討の方は、是非、本格的なパイロットの商品をご選択下さい。安価なものとは、全く違った作りです。

※右がMSペン先

写譜ペンの検品調整

あらゆる太さのペン先の中で、写譜用のMSペンは、検品調整の難易度が極めて高いです。
特に、3つに割れている先端をきっちりと揃えるのが難しいです。
写譜ペンの検品調整作業は、先端がそろっているかの検品調整がすべてといっても過言ではありません。
当店では写譜ペンの場合、音符を書かれるか、文字を書かれるか、用途をお伺いして、より適切な調整を施してお納めしています。
特に音符を書かれる本来のご用途の場合は、縦線が細くなるように検品調整します。書き味よりも縦線の細さが重要です。
縦線は、角で筆記することよって細さが出ているので、角を丸めるようなことはできません。
写譜ペンを書き味よくするといって角を落とすと、縦線は太くなってしまいます。
一般の文字を筆記される方の場合は、縦線の細さは追求しないほうが書き味が良くなります。

写譜ペンの種類

パイロットの写譜ペンは、以下の3種類がございます。
装着されているペン先から分類しますと、ペン先の大きさは5号と10号の2種類があります。このうち、10号ペン先はペン先表面が金色と銀色の2種類があります。結果として、合計3種類があります。

カスタム74 税抜¥14,000


14金の(大きさ水準)5号のペン先が装着された商品です。
キャップと軸の先端は丸い形状です。
軸色はブラックのみです。
2019年1月、価格が改定され、12,000円から14,000円へ変更となりました。

カスタム742 税抜¥20,000

おすすめ品

14金の(大きさ水準)10号のペン先が装着された商品です。
軸の太さは、カスタム74より少し太いです。
キャップと軸の先端は丸い形状です。
軸色はブラックのみです。

おすすめとご選択

ご予算が可能なら、カスタム742をおすすめします。

20,000円のカスタム742と、14,000円のカスタム74の違いについて

カスタム742の方がペン先の首端面からの突き出し長さがカスタム74のペン先より2ミリ長いです。
パイロットでは、カスタム742の10号ペン先が大きさとしては標準なので、742の方がパイロットのもっとも標準的ペン先仕様ということになります。
また、742は、ペン先周りの剛性も強いという特性があります。
カスタム742は、700円の吸入器コンバーター70が標準添付されています。カスタム74でも、別売りでコンバーター70をお求め頂くことは可能です。
軸太さは、742の方が若干太いです。筆記時の軸長さはほぼ同一です。
気にならないところではありますが、首と軸のつなぎ目のねじは7422の方が細かいねじになっています。

ご予算が可能なら、742のMSペン先(写譜ペン)の方が、6,000円という価格差以上の違いがあり、お買い得です。742のほうが、タフな使用に耐える剛性感は上です。

写譜ペンの使い方

写譜ペンの使い方は、あまり紹介されていません。メーカーでもPRしていないので、是非以下をご一読いただき、使いこなしてみてください。
上記使用方法に関しては、当店の写譜ペンご愛用の音楽家の先生より、アドバイス頂きました。ありがとうございます。
通常の筆記では、万年筆は紙に対して以下のように保持すると思います
※以下の作例に使用したペン先は、現在廃盤のカスタム67です。現在お買い求め頂けるカスタム74や742は、縦線が以下画像よりも細く書けます。

しかし、写譜ペンでは、五線紙の横線にペン先が90度直角となるように持ちます。縦線が細い線になるように保持するわけです。この持ち方が基本中の基本、ホームポジションとなるので、この保持はじゅうぶんに練習して下さい。

使用例:2分音符を書いてみる
1.まず、玉の上半分のみを左から右に弧を描くように運筆して書きます

2.次に玉の下半分の半円を左から右に弧を描くように運筆して書きます
この、玉を上下に分けて筆記するのが写譜ペンの保持方法と並んで、最重要ポイントです

※四分音符の場合は、上記のように玉の外枠を描いたあと、塗りつぶします。

3.最後に上から下へ縦線(棒)を書きます

※8分音符の場合、この後で、旗を書きます。

※上記画像は、何度か紙からペン先を離して、音符のパーツごとに書くような書き方ですが、以下の画像のように、一筆書きのように書く方法もあるようです(以下の文章は、この一筆書きの書き方ではなく、上記の写真の筆順を基に論じています)

作例の写譜ペンは文字筆記用に調整したもので、縦線の細さを追求した仕様ではないので、皆様にお届けする写譜ペンは、上記画像より、もう少し棒が細く書けます。

※縦線の細さは、角を使って細く書いているので、軸を傾ける角度によって、縦線の太さはだいぶ変わります。音符筆記用に適切に調整された写譜ペンならば、下3枚横に並べた写真の真ん中、45度くらいに傾けたときがもっとも細く書くことが出来ます。
角で書くイメージ
このような角でしたら、軸を傾ける角度によって細さに違いありませんが、実際は、ココまで角が立たずに微妙に丸めてあるので、角度によって細さが変わるのです。


なお、以下のような場合は、45度くらいにしても縦線は細くなりません
●不適切に先端形状を変えてしまったりした場合
写譜ペンのことを理解していない方が調整すると、せっかくの角が丸まってしまい、縦線が太くなってしまいます。
●酷使して先端が摩耗し角が丸まってしまった場合
パイロットの写譜ペンの先端は、かなり硬いので、摩耗の心配はほどんどありません
こういう特徴は写譜ペンにはとても有利な訳です

上記に若干付記したように、他の音符もこの応用で筆記できると思います。
ポイントは丸を一筆でくるっと描かないで、上半円と下半円に分けて書くことです。
そして、五線紙の横線に90度直角に保持した状態のままで描きます
実際描いてみるとわかりますが、上記写真の手順で描くと、圧倒的に早く描けます。

応用例として・・・
●玉を書かないことには音階が決まらないので、先に玉だけを書いて、後から棒や旗を書くのも良いです。
●文字や、「タイ」「スラー」なども、90度直角に保持した状態のままで書くことが多いです。あくまでも90度直角に保持するのがホームポジションになるのです。
●棒は、下から上に運筆すると、急ぐときには効果的です。ただし、どちらかというと、上記のように、上から下に運筆する方法をおすすめします。

五線紙の横線に90度直角に保持する持ち方をしない、例外について
以下を筆記するときは、例外的に、五線紙に平行な、一般的な万年筆の保持の仕方で筆記します
●終止線の最後の1本(90度持ち替えるだけで、終止線の細線と太線がいとも簡単に細くも太くも書けることだけで、写譜ペンのメリットがあることがおわかり頂けると思います)
●五線紙の、上第一線、上第二線、上第三線のような、「加線」
※加線については、加線を書くときのみ五線紙に90度直角に保持した持ち方から、都度五線紙に平行な保持に持ちかえるのは実際は面倒なので、90度直角に保持したホームポジションのまま(太い加線にはなりますが)書く方も多いようです。

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