キャップがねじ構造になっている万年筆

多くの万年筆のキャップは、軸との接合にねじが使用されております。多くの筆記具は引き抜くキャップですが、万年筆はねじキャップであることが多いです。
万年筆のキャップがねじで開閉する方式であることは、筆記具としてのステイタスを高めているかもしれません。

キャップのねじには特殊なねじが使われています

キャップのクリップと、軸に入れた名入れや軸に張ったシールとの位置が合っている状態でも、キャップを外してねじをはめ直すと、ある一定角度でずれるものがあります。
これはどういうことなのでしょうか。
万年筆の軸とキャップとの間には、多条ねじと呼ばれる、少々特殊なねじが切られています。
多条ねじとは、一言でいうと、「少ない回転で多く進むねじ」、より専門的に言うと、「条数(ピッチ÷リード)が2以上のねじ」ということになります。
このため、上記のような、ずれる現象が起きてしまいます。

ピッチとリード

まず、ねじの基本的な仕組みについて解説します。
ねじの山と山の間の距離のことを、「ピッチ」と呼びます。
ねじが一回転すると進む距離のことを「リード」と呼びます。
ねじは、棒に糸を巻いたようなものなので、イメージとしては、以下の画像のようになります。


図Cの場合、ねじが一回転すると*から*までねじが進みます。すなわち、ピッチ=リードです。

一般のねじのほとんどは図Cのようなねじで、1条ねじと呼びます。通常、1条ネジの場合は「1条ねじ」などと表記することは無いです。

リードがピッチの数倍となる「多条ねじ」

では、以下の画像のようなねじはどうでしょうか。

図Dは、図Cと全く同じ間隔(ピッチ)ですが、一本糸が増えています。図Dの場合、一回転するとねじが*から*まで進み、図Cの二倍の距離進みます。
独立したねじ山が二つあるねじ、これが二条ねじで、二つ切り込ませてあるので、一回転でねじの間隔(ピッチ)の二倍進みます。
リードはピッチの2倍となります。リード=ピッチ×2です。

図Eでは3本切り込ませてあるので、3条ねじ、リード=ピッチ×3です。
この切り込ませる本数が増えればそれだけ一回転に進む距離であるリードが大きくなります。

このような、2条ねじ以上のねじのことを多条ねじと呼びます。切り込まれるねじ(上記画像で言うと糸)の数を「条数」と呼びます。
条数=リード÷ピッチ となります。
ねじを装着したとき、1回転当たりのねじのかみ合う山数は、リード÷ピッチとなります(後述のように、この点が多条ねじのメリットとなります)。
多条ねじは少ない回転でより多くの距離を進むことにより、少ない回転でねじを脱着できるのが特徴です。
身の回りの瓶の蓋などにも、多条ねじは多用されております。
明治のR-1ヨーグルトの蓋は3条ねじで、半回転弱で開きます。
昔のカメラのレンズは、レンズの周囲に配置されたピント合わせのリングを回してピントを合わせましたが、内部に切られたねじは、ヘリコイドと呼ばれる多条ねじです。

万年筆のキャップと軸には、上記3条ねじのイラストにもう1本巻く糸を増やした、4条ねじが切られています。
上記画像では、3条ねじの始まりと終わりの糸の先端が揃っておりますが、実際は、円周上に均等間隔で揃えて見た目にまったく違和感の無いようにします。
4条ねじの場合は円周360°を4で割った90°ずつ切り分けます。
以下の画像は当店の商品となりますが、キャップと軸に切られた4条ねじのうち、ねじのスタート部分2つを見ることができます。

多条ねじのメリット

多条ねじの最大のメリットは、少ない回転で多くの距離を進むねじを作成出来るという点にあります。
このため、多条ねじのことを「早ねじ」と呼ばれることもあります。
具体的には、少ない回転で素早く脱着できるねじキャップが実現できます。
万年筆の場合、素早く開閉したい部品に使われます。

※上記画像では、ピンク色のキャップ内部に切られた4条ねじの内の二つの切り始め部分が透けて見えます。
なぜキャップと軸が装着されるねじに特殊なねじである4条ねじを切るかと言うと、筆記時にキャップが適度な(多くの場合少ない)回転であき、ねじが適切な山数でかみ合うようにするためです。
仮に一回転のキャップで良いということで、一条ねじの一回転のキャップを作った場合、ねじのかみ合いが一山しかありません。一山のみかみ合うねじでは、いくらかみ合いの深いねじを切っても、強くキャップを閉めればねじがはじいたりねじ山を損傷したりしてしまいます。市販の万年筆のキャップの多くも多条ねじが切られていますが、条数は各メーカーによってまちまちです。
蒔絵を施す商品の場合は、描いた蒔絵がずれないように、あえて、1条ねじが採用されることもあります。当然4条ねじよりはキャップの脱着のために回す回転量が多くなってしまいます。

ピッチの大きな1条ねじを切らずに、ピッチが小さくリードが大きい多条ねじにする理由

わざわざ面倒な多条ねじにせず、同じ回転数で開閉できる、同じ効果が出せる、ピッチの大きな1条ねじを切れば良いのに、なぜ多条ねじにするのか、リードが2.0ミリのねじを例として、まとめて解説します。

A 多条ねじの場合
たとえば、リードが2.0ミリのねじを4条ねじで切る場合は、前述のように、条数=リード÷ピッチで、ピッチ=リード÷条数なので、ねじの山と山の距離であるピッチは2.0÷4=0.5ミリ※1になります。
1回転のねじの場合、ねじのかみ合う山数は、リード÷ピッチとなるため、2.0÷0.5=4山※2となります。
B 1条ねじの場合
1条ねじなので、ピッチ=リードなので、ピッチは2.0ミリ※3になります。
1回転のねじの場合、ねじのかみ合う山数は、リード÷ピッチ(というより1条ねじの場合、回転数=山数といった方が早いです)となるため、1山となります※4

上記をもとに考えてみますと、同じ1回転のねじでも、多条ねじの場合は、※1※3を比較してわかるように、ピッチが小さいため、ねじの山の深さも浅く、※2※4を比較してわかるように、かみ合う山数も多いねじにすることができます。
ピッチが小さいということは、万年筆の軸の入り口のように、中にも外にもねじを切る場合、ねじの山の深さが浅いことは、肉厚が限られるため、とても有利となります。上記の例の場合、ピッチ2ミリのねじというと、見た目にとても荒いねじになるので、軸の内側と外側両方にねじを切るためには、軸内部の穴を小さくして、かなりの肉厚を持たせなければならないことになります。
かみ合う山数が多いということは、ねじを締結したときに、締め終わりを安定させることができます。かみ合う山数が少なければ、ピッチの大きいねじの山が深いねじ(見た目に大きなねじ)であっても、頼れるのが上記の例の1回転ではわずか1山だけになってしまいます。この場合、かみ合う山数を多くしようとすると、回転数が多くなってしまいます。
結局のところ、多条ねじにしたほうが、肉厚が限られる部品に効果的なねじの山の深さも浅いねじになり、ねじがかみ合う山の数も多い、安定したねじを切ることができます。
上記の※1※2は「少ない回転で多く進むねじ」という多条ねじのメリットそのものであり、製作上のコストは上がっても、多条ねじを採用するメリットが大いにあるわけです。

なお、ねじの山数を、リード÷ピッチ、すなわち条数で割ると回転数となります。軸の先端のキャップとはまるオスねじの山数を条数で割るとキャップの回転数が出せそうに見えますが、ねじの締め終わりはナカゴ等で別に決まり、締め終わりが不安定なねじの終端ではないため、山数を数えても純粋な回転数が出せないことが多い点にご注意ください。
詳細は、二重キャップ構造(段差の役割)をご覧ください(以下に一部引用します。太字部分が結論となります)。

段差の役割

段差は、首先端と接触することにより、キャップ気密をつかさどるほか、キャップ回転数を決する重要な部分です。気密はキャップ内部の段差と首の先端を精密に切削することで実現しています。エボナイトの接触圧のみで完全に気密を保っております。
キャップを閉め終わったときにピタッと止まりますが、止まるところはねじとねじの終端ではなく、首の端面とキャップ内の段差です。この両者の平面接触の接触具合を吟味した結果、キャップと軸のねじがゆるみにくい仕組みになっております。
段差があるため、段差より奥に首が入り込むことはありません。このため、仮に首をゆるめたままキャップをしてしまった場合、段差が無いとキャップ天井にペン先が当たってしまう恐れがありますが、段差があればペン先が当たることは無く、通常より少ない回転でキャップが閉じるだけです。段差は、キャップにとって必須の安全構造でもあるのです。

多条ねじのデメリット

多条ねじは、ピッチよりもリードのほうが大きいため、「リード角」や「傾斜角」と呼ばれる切られたねじの傾斜している角度が、通常の1条ネジよりも大きくなります。上記図のCからEで、棒に巻き付けられた糸の、棒に対する斜めになった角度がねじのリード角になります。
このリード角が大きいと、締結力が弱くなります。もっとも、指で開閉する万年筆部品の場合は、後述のような、ねじが最後にピタッと固定される締結部を適切に設計すれば、多条ねじと1条ねじの締結力の差は問題となりません。
それ以上に、切削が難しいというのが最大のデメリットです。
4条ねじの場合、ねじ山を独立に4つ切り込ませるような作業が必要となります。まったく別のねじを4つ切っていると言うべき作業です。
この独立した4つのねじ山を、となりどおしのねじ山との間隔を均一に、均等な深さで切る必要があり、これがキャップのメスねじと、軸のオスねじの軸両方に必要になります。
特にキャップ内部を切るときは外からは見えない作業となるため、難易度が非常に高いです。
また、「切り上げ」と呼ばれる、ねじの切り終わりをきれいに揃える作業も、4条ねじの場合4カ所必要になります。
ねじを切る場合、タップやダイスといった、便利なねじ切り工具もありますが、多条ねじのタップやダイスの標準市販品はないため、多条ねじの場合、すべて一品ごとにねじを切る必要があります。
また、多条ねじは、かみ合うとき、複数のねじ山が同時に入る必要があり、オスねじとメスねじが真っ直ぐ当たらないと、ねじがかみ合わないことがあります。
多条ねじが切られた部品は、ねじが真っ直ぐ入るような案内となる部分を有した設計構造にする必要があります。
このため、万年筆部品は、多条ねじを採用しないほうが、設計も製作も容易になりますが、ねじキャップに多条ねじを採用しないと、キャップを外すために、何回転もさせなければならなくなってしまいます。

キャップのクリップと軸がずれる理由の答え

おさらいとして、最初に書いた、キャップのクリップと、軸に入れた名入れや軸に張ったシールが、一端位置をあわせても、ねじをはめ直すと、ある一定角度でずれる理由をご説明します。
仮にその品物のキャップと軸とが二条ねじだった場合、上記D図のように、軸とキャップそれぞれに白と黒の二つの独立したねじが切ってあります。
以下、便宜上、上にも掲載した以下図Dのように、ねじ白とねじ黒と表します。ねじの組み合わせとしては、以下の二種類が考えられます。

① キャップのねじ白と軸のねじ白 キャップのねじ黒と軸のねじ黒が入る組み合わせ
② キャップのねじ白と軸のねじ黒 キャップのねじ黒と軸のねじ白が入る組み合わせつまり、ねじの入る位置が、正反対になるのです。
二条ねじですから、ねじの入る位置は、円周360度÷2で、180度になります。ねじを締め終わった位置も、上記の組み合わせ①と②で180度でずれるわけです。
このように、二条ねじの場合、二通りのねじが入る組み合わせが考えられるので、軸の、クリップの真下に張ったシールも、クリップの真後ろに回ってしまうねじの組み合わせがあるのです。
これが、3条ねじなら3通り、4条ねじなら4通りで、それぞれ、360度÷3の120度、360度÷4の90度ずつずれる組みあわせがあるのです。
4条ねじなら4つの入る組み合わせがあるので、そのすべての組み合わせで理想的なねじ勘合にしなければならないので、1条ねじの4倍(実際には単純に4倍ではなくもっと難しい)難しい作業になるのです。

masahiro万年筆製作所製品に使用される多条ねじ

当店の商品の場合、キャップと軸のねじに、ピッチ1インチ当たり36山で、リードが1インチ9山の4条ねじが切られています。M形吸入方式の後部つまみには、ピッチ0.5ミリ、リード1.0ミリの2条ねじが切られています。
キャップと軸のねじは独特のインチ規格ですが、万年筆のねじには伝統的にこのねじが使われています。パイロットの戦前の古い商品もこの規格になっています。軸のオスねじは、指先で触れますし、ピッチは常に目視されるため、違和感の無いねじ山にする必要があります。無難なピッチとなると、ちょうど、この、1インチ当たり36山のねじが使用されてきました。
インチ規格のねじのピッチは、1インチ当たりの山数で表記され、インチ何山といった表記がされます。ます。1インチ36山のねじは、1インチ=25.4ミリなので、ミリで表記すると、25.4÷36=0.705ミリとなります。
かつては、インチ32山の4条ねじを採用していたメーカーもあります。現在では、ピッチ0.75ミリの2条ねじやなどもあり、インチ36山の4条ねじ以外のねじも多くあります。
ピッチがインチ36山以外の、インチ32山や0.75ミリでも、見た目の荒さに違いを感じませんが、インチ36山の4条ねじが万年筆のねじとして事実上の標準ねじです。

万年筆部品のねじ締結力が生成される要素

キャップのねじは、締め終わったときに、ピタッと止まりますが、この止まる仕組みはいくつかあります。もっとも理想的な順番に書きますと、
A 首の先端が、キャップの中の段差や部品に当たって
B 軸に段差を設け、その段差とキャップの入口が当たることにより決める
C オスねじとメスねじの終わりまでねじが達することにより締め終わる

Aは、もっとも理想的な構造で、キャップの中に段差を設けたり、ナカゴやインナーキャップと呼ばれる筒状の部品の入口を首先端の受けとすることにより、キャップ閉め終わりにこの段差や受けと首が当たって締め終わります。
パイロットのカスタム74透明軸や、カスタム823では、キャップに中に入ったインナーキャップを見ることが出来ます。
インナーキャップの場合は、インナーキャップの材質によって、閉め終わりの感触が異なり、カスタム74では柔らかい感触、カスタム823では割と硬めの感触です。
当店の商品の場合は、キャップの中に段差を設け、この段差平面(正確にはほんのわずか角度をつけてあります)と首の先端平面が当たることにより、ピタッとした独特の閉め終わり感触となり、抜群の気密を誇ります。
首先端とキャップ内部の段差の当たり方を工夫すれば、かなりの締結力を出すことができます。

Bは、軸に段差があるような商品の場合、軸の段差とキャップ入口が当たることにより、締め終わるタイプのものがあります。特にインナーキャップが可動式の商品の場合、インナーキャップ先端の接触で閉め終わりを決めることが難しいため、軸の段差で閉め終わりを決める手法が取られることがあります。この場合、キャップの入口と段差は当たる平面が少ないため、キャップ入口と軸の段差の両方の設計を吟味する必要があります。
軸に段差があるような商品でも、Aの手法が取られている商品もあります。

Cは、軸に段差が無く、Aのようなキャップ内に段差が無いタイプのキャップの場合、ねじの閉め終わりは、キャップのメスねじ入口が、軸のオスねじ終端に達したとき、または軸のオスねじ先端がキャップのメスねじ終端に達したときに閉め終わることになります。
ねじの終端は山が不完全で、ねじが浅い部分があります。そのため、ねじの閉め終わりは、ピタッとはせず、きわめて不完全なものとなります。
通常、この、ねじ終端で閉め終わりを決するような商品はあまりありません。
Aのタイプで首を外して、軸だけをキャップにねじ込めば、このCタイプと同じことになります。

ねじの引っ掛り率は、オスねじとメスねじのねじ山がどれだけ深くかみ合っているかを示す度合いです。単純に申せば、ねじのガタつきのことです。
ねじの引っ掛りが浅いと、ねじが締め終わったときに、ピタッと閉まらず、ねじが弾くようにゆるんでしまい、締結力が全く出ないねじとなってしまいます。
引っ掛り率は、簡単には、オスねじの外径と、メスねじの内径との差で測定することができます。
この差が、おおよそピッチ(ねじの山と山との間隔)位あれば、ほぼ100%に近い引っ掛り率ですが、実際の引っ掛り率はかなり浅いです。
多くの万年筆は、0.7や0.75ピッチのねじが使用されておりますが、実際の引っ掛り率は、オスねじとメスねじの径差で0.3程度のものも少なくないです。
引っ掛り率は、ねじをはめたときのガタつきである程度はわかります。
全くガタツキが無いねじでは、ねじの谷にゴミやホコリが入ってしまうとねじが固くなってしまうため、ある程度の余裕は必要です。

引っ掛り率が確保されて、閉め終わりが適切に設計されたキャップは、容易に緩むものではありません。また、ある程度キャップを強く閉めても問題無いです。

キャップと軸とのねじにはあまり関係ありませんが、オスねじとメスねじの材質が違いますと、締結力はまた違ったものになります。
ねじの締結力は、ねじの斜面同士の密着によって出されるものなので、異種同士ですと、ゆるみやすいこともあります。これを防ぐために、異種同士のねじの場合、パイロットのカスタム74などの首オスねじ根元のパッキンのように、緩み止め措置が施されることもあります。

ねじの回転数は、オスねじとメスねじのかみ合み合う山数を決するだけで、ゆるみにくさにはほとんど影響しません。
キャップが1回転で開け閉め出来るキャップの場合、ねじが普通の1条ねじならばかみ合う山数は1山のみです。このようなねじですと、1山のみにすべての力が掛かってしまい、ねじ山が折れたりしてしまうことがあり、強く閉めることが出来ないです。強く閉めることが出来ないことにより、締結力が出せないということになります。それ以上に、使用に際し、破損してしまう可能性のほうが高いです。
これを4条ねじにすれば、1回転のキャップでも、ねじ山が4山かみ合う、とても安定したねじとなるわけです。
1条ねじであっても、4回転のキャップならねじ山が4山かみ合いますが、開閉にとても時間が掛かってしまいます。そこで、4条ねじにして、素早く開閉できるようにするわけです。
ちなみに、厳密に申しますと、ねじは4条などの多条ねじよりも1条ねじのほうが、ねじ自体の傾斜角(リード角)が緩やかなので、計算上はゆるみにくいのですが、手で開閉する万年筆の部品に関する限り、リード角の影響はほとんどないです。

当店の商品は、通常の4条ねじのほか、4条ねじと2条ねじを使用しており、余裕は持たせながらも、かなり高い引っ掛り率のガタの少ないねじを切っています。
閉め終わりはすべて平面で決めており、独特のピタッとした閉め終わり感触で、ゆるみにくいねじとしてご好評頂いております。
当店の商品の場合、どのねじも、強めに締めて頂いても問題無いですが、他の万年筆のねじは当店の商品のように強く締めることが厳しいことがありますのでご注意下さい。

ねじのゆるみにくさ、ねじの締結力とねじ条数について

ねじの締結力(締まったキャップねじや部品のねじのゆるみにくさ)は、厳密に言えばピッチやリードによって若干変化します。ねじそのものの傾斜角度であるリード角が大きい多条ねじよりも、リード角が緩やかな1条ねじのほうが締結力が強いです。ピッチは細かいほうがねじそのものの傾斜角であるリード角が小さいため緩みにくいです。
しかし、実際のところは、ねじのゆるみにくさは、閉まり終えたときの一瞬の締め付け力だけで決まります。手で開閉する万年筆部品の場合、ピッチやリード、そして、キャップの回転数やかみ合うねじの長さによる影響は少ないです。
ちなみに、当店の製品では、首と軸を接合するねじは、少しでも締結力を安定向上させるため、ピッチ0.5ミリの1条ねじを採用しております。

ねじの締結力は、ねじの回転数は無関係です。
ねじのゆるみにくさは、ねじの引っ掛り率と、ねじしまり終わりの固定方法(固定部分)の構造のみで決まります。
回転数は関係なく、回転数のみで語れるほど単純な話では無いです。
キャップの開閉に必要な回転数が多いねじほどゆるみにくい、などということはないのです。
万年筆の部品の場合、平たく言えば、締め終わりのピタっとした感触、締め終わりの締結感だけでゆるみにくさが決まるといっても過言ではありません。

4条ねじの場合、ねじを4回切ったようなねじ、4通りの締結パターンが存在するねじになるため、正確なねじ(ねじを入れたときに軸とキャップが真っ直ぐに装着されるねじ)を切ることは、実はかなり難しい作業になります。
4条ねじが装着出来ても、軸に対して真っ直ぐに閉まらないねじの場合、上記の閉め終わりAのようなキャップ内部の段差に正確に当たらず、ねじの締結力が出ないこともあります。
この4条ねじが真っ直ぐ切られているか否かは、商品を目視しただけではわかりません。軸やキャップを機械に把握して回して見るとすぐにわかります。